館長あいさつ

西谷 大

NISHITANI Masaru

国立歴史民俗博物館 館長

歴博について

国立歴史民俗博物館(略称「歴博」)は、大学共同利用機関法人人間文化研究機構を構成する6つの研究機関の1つです。現代的視点・世界史的視野のもとに、日本の歴史と文化に関する研究を進めています。
文献史学・考古学・民俗学および自然科学を含む関連諸学の協業によって、「学際的、先進的、総合的な人文学研究」を、大学をはじめとする国内外の研究者とともに推進することを特徴としています。同時に1983年に開館した当初から、こうした研究の成果を、総合展示および企画展示というかたちで可視化することで研究そのものの高度化を図ってきました。そして広く社会に公開・発信することを目的として、博物館という形態をとっています。2019年3月には、「第2の開館」と位置づけて、開館以来36年ぶりに総合展示第1室「先史・古代」をリニューアルし、一般公開いたしました。

人文学研究の必要性

では歴博がおこなっている人文学研究は、なぜ必要なのでしょうか。
人間社会を維持するためには、知識と知恵が必要です。その知識と知恵は人間の長い歴史なかで蓄えられ作り上げられてきました。私たちはその知識と知恵をよりよいものに高めていく必要があります。そのためには人類の歴史を多様な視点から見つめながら、歴史のなかで培われた知識と知恵がどのように生まれてきたのか、また知識と知恵が社会と人にどのような影響を与えてきたのか、その歴史を明らかにする必要があります。

私たちの課題

世界は激動の時代です。国家のあり方や国家間の関係性の枠組みが激しく揺れ動いているだけではありません。技術革新が誰も想像もしなかった方向へと急速に変化し、環境破壊や経済格差が進み、一体この先、私たちがどうなるのか、どこへ向かうのか、どうしたらいいのか誰にもわからず、その不透明感と不安感が世界を覆っているようにみえます。
私たち歴博は、今一度、人類の歴史活動のなかで、自分たちの立ち位置に確かな見解をもつことが責務だと考えています。そして私たち自身が「人類の歴史を広い視野でみる力」「過去や異なる世界を想像する力」「異質な世界観や価値観をもつ他者に対する共感力」を養うとともに、このような「力」をもつ次世代の人を、皆様とともに育てていく必要があると考えています。

今後とも歴博に対する皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
2020(令和2)年4月