「歴史・文化の中の鄭成功」

特集展示

歴史・文化の中の鄭成功

開催概要

開催期間

2024年11月26日(火)~ 2025年1月26日(日)
※館内メンテナンス・悪天候等、諸般の理由により、開館日・開館時間等の変更、各種催し物を延期または中止する場合があります。最新の情報は館のホームページ及びSNSでご確認ください。

会場

国立歴史民俗博物館 第3展示室 特集展示室

料金

一般600円(350円)、大学生250円(200円)、高校生以下無料
※( )は20名以上の団体料金です。
※総合展示もあわせてご覧になれます。
※障がい者手帳等保持者は手帳等提示により、介助者と共に入館無料です。
※高校生及び大学生の方は、学生証等を提示してください。
※博物館の半券の提示で、当日に限りくらしの植物苑にご入場(16:00まで)できます。 また、植物苑の半券の提示で、当日に限り博物館の入館料が割引になります。

開館時間

9:30~16:30(入館は16:00まで)

休館日

月曜日(月曜日が休日にあたる場合は開館し、翌日休館)、12月10日(火)、1月7日(火)、年末年始(12月27日(金)~1月4日(土) )

主催

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館
国立台湾歴史博物館

協力

台南市立博物館

みどころ

  • 鄭成功が生きた時代の歴史的背景について理解を深めることができます
  • 日本と台湾におけるそれぞれの鄭成功イメージの展開について、具体的な資料とともに知見を得ることができます

趣旨

鄭成功は1624年、日本の平戸で誕生しました。父は貿易集団のリーダー鄭芝龍、母は田川氏の娘です。明朝の再建をめざす南明を経済・軍事の両面で支えた鄭成功は、その死後、台湾では「開台聖王」として神格化されてきました。

日本では、鄭成功の死後50余年を経て、鄭成功をモデルにした人形浄瑠璃『国性爺合戦』が近松門左衛門によって生み出されました。長期公演となる人気を博し、歌舞伎化されるなどして、そのイメージが流布していきました。和藤内(鄭成功)が虎と格闘する場面は、民俗芸能としても現代に伝えられています。また、台湾を植民地化(1895~1945年)した日本は、鄭成功の物語を台湾統治の正当性を示すために利用しました。

本特集展示では、鄭成功が生きた17世紀、日本で新たな物語へと変容する18世紀、そして近現代という3つの時代における、日本と台湾の鄭成功に対するイメージを通して、台湾と日本の歴史と文化のつながりを考えてみたいと思います。

なお本特集展示は、国立台湾歴史博物館との交流事業として同館との共催により開催するものです。

歌川国貞画「五代目市川団蔵の呉将軍かん輝、沢村訥升の錦枡女、五代目市川海老蔵の和藤内三宦」(「国性爺合戦」より「紅流し」)
天保10年(1839) 国立歴史民俗博物館蔵

主な展示資料

  • リンスホーテン『東方案内記』所収 東アジア図 1595年
  • 歌川国貞画「五代目市川団蔵の呉将軍かん輝、沢村訥升の錦枡女、五代目市川海老蔵の和藤内三宦」(「国性爺合戦」より「紅流し」)天保10年(1839)
  • 豊原国周画「神田三崎町 東京座中幕国性爺 和藤内 市川團十郎」明治29年(1896)
  • 三代歌川豊国画「写絵所作の内 和藤内 猟人」安政4年(1857)
  • 「堤人形 和藤内の虎退治」近代(個人蔵)
  • 「三春張子人形 錦祥女」現代(個人蔵)
  • 映像「浦賀郷土舞踊 虎踊実況 昭和八年八月十九日」(横須賀市教育委員会蔵)

など 約20点(一部個人蔵・他館蔵、その他全て本館蔵)
ただし、会期中、展示替えを行います。

展示代表

展示代表

内田 順子

UCHIDA Junko

大学共同利用機関法人人間文化研究機構
国立歴史民俗博物館 民俗研究系 教授

主な研究テーマは、民俗学・民俗学的な映画に関する研究。
主な著書『映し出されたアイヌ文化―英国人医師マンローの伝えた映像』(2020年、吉川弘文館)、『DVDブック 甦る民俗映像 渋沢敬三と宮本馨太郎が撮った1930年代の日本・アジア』(共編著、岩波書店、2016年)。

1)リンスホーテン『東方案内記』所収 東アジア図

1) リンスホーテン『東方案内記』所収 東アジア図
1595年 国立歴史民俗博物館蔵

オランダのリンスホーテンが出版した『東方案内記』(ポルトガル領インドへの旅行記)に収録される地図。この図では、"Lequeo pequeno"(「小さな琉球」)"の脇に、"I. Fermosa"(Isla Fermosa=美しい島)"とあり、より正確な地理情報にもとづく地図といえる。

2)歌川国貞画「五代目市川団蔵の呉将軍かん輝、沢村訥升の錦枡女、五代目市川海老蔵の和藤内三宦」(「国性爺合戦」より「紅流し」)

歌川国貞画「五代目市川団蔵の呉将軍かん輝、沢村訥升の錦枡女、五代目市川海老蔵の和藤内三宦」(「国性爺合戦」より「紅流し」)
天保10年(1839) 国立歴史民俗博物館蔵

天保10年(1839)3月、河原崎座の「国性爺合戦」の三段目「甘輝館」の「紅流し」の場を描いたもの。和藤内らは甘輝将軍を韃靼討伐の味方につけようとし、錦祥女はそれが成功した際は白粉を、失敗ならば紅を堀に流すことで合図することを取り決め、結果、紅が流される。実はこの紅の色は、味方につくことを逡巡する甘輝の決断を促すため、錦祥女が自刃した血であった。橋の上から流れる紅をうかがう和藤内は、錦絵に描かれる際のお定まりの姿。

3)三代歌川豊国画「写絵所作の内 和藤内 猟人」

3) 三代歌川豊国画「写絵所作の内 和藤内 猟人」
安政4年(1857)9月 国立歴史民俗博物館蔵

安政4年(1857)9月、中村座の浄瑠璃所作事「松朝扇(ときわのいろおうぎ)うつし絵」で演じられた7種の舞踊のうち「和藤内」を描いたもの。和藤内を演じるのは尾上和市。

4)豊原国周画「神田三崎町 東京座中幕 国性爺 和藤内 市川團十郎」

4)豊原国周画「神田三崎町 東京座中幕 国性爺 和藤内 市川團十郎」
明治29年(1896) 国立歴史民俗博物館蔵

明治30年3月、神田三崎町の東京座で上演の「国性爺合戦」で、九代目市川團十郎の演じる和藤内を描く。甘輝館の「紅流し」の場で、松明を手に錦祥女から来る合図の流水の色をうかがう和藤内。3枚続の大きな画面に役者ひとりを大きくとらえるのは、明治の役者絵の特徴のひとつ。

5)堤人形 和藤内の虎退治

5) 堤人形 和藤内の虎退治
近代 個人蔵

宮城県仙台市で作られた堤人形の和藤内。和藤内(鄭成功)が唐土の千里が竹に入り、虎狩りに出くわし、虎が襲おうとしたところを天照大神のお札の威力で虎を手懐けたという、人形浄瑠璃や歌舞伎の場面を人形にしたものである。堤人形は堤焼を母体にして生まれたといわれている玩具で、土を型取りして素焼きして、下地をつけて彩色したものである。

4)豊原国周画「神田三崎町 東京座中幕 国性爺 和藤内 市川團十郎」

6)三春張子人形 錦祥女
現代 個人蔵

福島県三春町で作られた三春張子人形の錦祥女である。錦祥女は和藤内の異母妹で夫の甘輝将軍を和藤内の見方となるように自害をした、「紅流し」の場で有名である。張子とは、木型等に紙を貼って乾燥させ、型を抜いたものを彩色したものである。