「北の大地が育んだ古代-オホーツク文化と擦文文化-」

特集展示

北の大地が育んだ古代

開催概要

開催期間

2023年11月14日(火)~2024年2月12日(月・休)

会場

国立歴史民俗博物館 第1展示室 特集展示室

料金

一般600円/大学生250円
高校生以下無料

開館時間

9:30~16:30(入館は16:00まで)

休館日

月曜日(月曜日が休日の場合は開館し、翌日休館)、
年末年始(12月27日~1月4日)

主催

東京大学大学院人文社会系研究科・同附属北海文化研究常呂実習施設、大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館

趣旨

日本史で古代(飛鳥・奈良・平安時代)と呼ばれた時代、北海道ではオホーツク文化と擦文文化が展開していました。オホーツク文化は、5世紀から9世紀頃にサハリン南部から北海道の東北部、千島列島にかけて広がった文化です。北方から南下した外来の文化と考えられており、海獣狩猟と漁撈を生活の基盤とし、クマを中心とする動物儀礼に特徴があります。擦文文化は7世紀後半から12世紀にかけて北海道の全域に広がった文化で、本州の古代国家の影響のもとに成立しました。漁撈・狩猟・採集を中心に雑穀を利用し、アイヌの文化の直接的な母胎になったと考えられています。しかしながら、ともに本州の古代と同じ時代の文化であるにもかかわらず、本州においては馴染みが薄いのが現状ではないでしょうか。

今回の特集展示では、北海道東部の北見市常呂町に拠点をおき長年にわたって調査・研究を進めてきた東京大学常呂実習施設と、大学共同利用機関である当館が連携して、この2つの文化をわかりやすく紹介します。日本列島には多様な文化が展開していたこと、「あなたの知らない古代」に関心をもっていただけたら幸いです。

なお本特集展示は、東京大学文学部「人文学における国際的地域・社会連携の推進」プログラム関連事業として実施します。

常呂川河口からサロマ湖を望む

常呂川河口からサロマ湖を望む

窪みで残る竪穴住居跡

窪みで残る竪穴住居跡

北海道東部には、古代の竪穴住居の跡が埋まらずに窪みで残る遺跡が多数存在する。東京大学は、常呂町に残るこのような遺跡を1957年から継続して発掘してきた。

駒井和愛

駒井和愛(1906-1971)

東京大学文学部教授。地元住民からの求めに応じて、1957年から常呂町で発掘調査を開始する。地域の協力を得て今日の常呂実習施設設立の基礎を築いた。

本展のみどころ

  • 日本列島の文化の多様性 「あなたの知らない古代」
  • 本州では馴染みが薄い北海道の古代、オホーツク文化、擦文文化を紹介します。
  • 東京大学による北海道東部の北見市常呂町での長年の調査と地域への貢献

「北の大地が育んだ古代-オホーツク文化と擦文文化-」小冊子はこちら

主な展示資料

  • 北見市内各遺跡(トコロチャシ跡、トコロチャシ南尾根、トコロ貝塚、栄浦第二、岐阜第二、大島2)出土資料(東京大学常呂実習施設蔵)
  • 北見市常呂川河口遺跡出土資料(北見市ところ遺跡の森蔵)
  • 根室市弁天島遺跡出土資料(根室市歴史と自然の資料館蔵)

など約40点

オホーツク土器(貼付文系)栄浦第二遺跡

1) オホーツク土器(貼付文系)栄浦第二遺跡

8~9世紀 東京大学常呂実習施設蔵

「ソーメン文」とも呼ばれる、粘土紐を密に貼り付けた文様が特徴的な土器。オホーツク文化後期の道東部にみられる。

 銛頭トコロチャシ跡遺跡・栄浦第二遺跡

2) 銛頭 トコロチャシ跡遺跡・栄浦第二遺跡

8~9世紀 東京大学常呂実習施設蔵

オホーツク文化では海獣狩猟や漁労の道具が発達した。海獣や大型魚を獲るための銛頭にも様々なタイプがある。

骨製クマ像トコロチャシ跡遺跡

3) 骨製クマ像 トコロチャシ跡遺跡

8~9世紀 東京大学常呂実習施設蔵

オホーツク文化には動物儀礼の痕跡が多くみられる。特にクマは特別視され、多くの像がつくられた。

青銅製帯飾栄浦第二遺跡

4) 青銅製帯飾 栄浦第二遺跡

8世紀 東京大学常呂実習施設蔵

オホーツク文化には、中国東北部・ロシア極東に展開していた靺鞨系の文化から、青銅製品などのモノがもたらされた。

紡錘車トコロ貝塚

5) 紡錘車 トコロ貝塚

12世紀 東京大学常呂実習施設蔵

擦文文化には、糸を作るための道具である紡錘車など、本州の農耕文化に由来するモノが多くみられる。

擦文土器甕栄浦第二遺跡

6) 擦文土器 甕 栄浦第二遺跡

11世紀後半 東京大学常呂実習施設蔵

擦文土器の器形や器面調整の技法は本州の土師器に由来するが、複雑な文様は北海道独自の特徴である。

トビニタイ土器 常呂川河口遺跡

7) トビニタイ土器 常呂川河口遺跡

1~12世紀 北見市ところ遺跡の森蔵

器形と文様意匠は擦文、文様要素(貼付文)はオホーツクと、二つの文化の融合が表れている。

展示代表

展示代表の画像

林部 均

HAYASHIBE Hitoshi

教授
研究部考古研究系
博士(文学)(奈良女子大学)(2001年取得)

専門分野:日本考古学
主要研究課題:東アジアの古代宮都(王宮・王都)の研究,考古学からみた地域社会の研究
所属学会:日本考古学協会,考古学研究会,日本史研究会,条里制・古代都市研究会

学歴:関西大学文学部史学地理学科(1983年卒業)

主な著書に、『古代宮都形成過程の研究』(青木書店 2001年)、 『飛鳥の宮と藤原京-よみがえる古代王宮-』(吉川弘文館 2008年)、『平城京100の疑問』(編著 学生社 2010年)など。