共同研究:交流・環境からみたオホーツク文化・擦文文化、アイヌ文化-その成立・展開過程-

歴博共同研究

基幹研究

環境や交流からみた日本歴史の動的研究

交流・環境からみたオホーツク文化・擦文文化、アイヌ文化-その成立・展開過程-

  氏名
(所属/専門分野/分担課題)
研究代表者 鈴木 琢也(北海道博物館/考古学/研究統括・擦文文化の交流と変容)
研究組織 榊田 朋広
(札幌市埋蔵文化財センター/考古学/擦文文化の交流と遺跡動態)
笹田 朋孝
(愛媛大学法文学部/考古学/鉄器からみた擦文文化の交流)
高畠 孝宗
(枝幸町オホーツクミュージアムえさし/考古学/オホーツク文化の交流と変容)
熊木 俊朗
(東京大学大学院人文社会系研究科/考古学/オホーツク文化の交流と遺跡動態)
臼杵 勲
(札幌学院大学人文学部/考古学/金属器からみたオホーツク文化の交流)
伊藤 武士
(秋田市立佐竹史料館/考古学/東北地方(出羽)からみた北方交流)
小谷 地肇
(おいらせ阿光坊古墳館/考古学/東北地方(陸奥)からみた北方交流)
亀丸由紀子
(北海道博物館/アイヌ民族文化/アイヌ文化の交流)
蓑島 栄紀
(北海道大学アイヌ・先住民研究センター/古代史/史料からみた北方交流)
手塚 薫
(北海学園大学/文化人類学/アイヌ文化の交流と変容)
林部 均
(本館研究部/考古学/古代国家の北方交流)
内田 順子
(本館研究部/民俗学/先住民族史からみたアイヌ文化)
三上 喜孝
(本館研究部/古代史/史料からみた北方史)
箱崎 真隆
(本館研究部/年輪年代学/環境復元、年代復元)

研究目的

古代北海道に展開したオホーツク文化(5~9世紀)・擦文文化(8~12世紀)は、本州の古代国家あるいはサハリン、千島列島、大陸などの諸文化との交流のなかで様々な影響を受けながら独自の文化を形成してきた。本研究では両文化が周辺国家・諸文化との多様な交流、さらにはその背景となる環境や社会との関わりのなかで、どのような文化的影響を相互に与え合いながら変容をとげ、アイヌ文化へと移行していくのかということ、すなわち考古学的な観点からみたアイヌ文化の成立過程を、交流及び環境や社会変化という視点から再構築することを目的とする。

オホーツク文化・擦文文化の実態を記す同時代の文献史料は極めて少ない。そこで、本研究では考古学的なモノ資料の分析をふまえて、人・モノの移動や交流の実態を把握し、文献史料の検討と合わせてその実像を再構築する。具体的には、(1)本州からオホーツク文化・擦文文化に搬入された鉄製品、須恵器、銙帯金具、銭貨等、その対価として本州にもたらされた毛皮類、海産物等に関する考古資料・文献史料の分析・検討をもとに、本州の古代国家・東北地方北部と、オホーツク文化・擦文文化との相互交流の様相を明らかにする。(2)北からの視点としてサハリンや大陸などからオホーツク文化・擦文文化にもたらされた青銅製品、軟玉、ガラス玉等を検討し、文献史料の検討も合わせて、北方諸文化との交流及び隋・唐、渤海などの大陸諸国家が両文化に及ぼした影響を明らかにする。そして、このような交流の展開と、オホーツク文化・擦文文化における集落動態や文化要素の変化などとの関係を検討し、多様な交流に促された両文化の変容を追究する。(3)考古学と文献史学からの検討を両輪としつつ、アイヌ民族文化研究の視点を加え、アイヌ文化のなかにオホーツク文化・擦文文化の交流のあり方や文化要素などがどのように受け継がれたのかということを追究することによりアイヌ文化の成立過程について検討を加える。また、(4)年代研究や環境復元に酸素同位体比年輪年代法を導入し、その検討の精度を高めるとともに、その研究基盤を構築し、環境がオホーツク文化・擦文文化の社会や交流、文化変容、アイヌ文化の成立過程に及ぼした影響を分析する。

このように、本研究ではオホーツク文化・擦文文化をめぐる南・北交流の様相と、その交流を契機とした社会変化や文化変容の実態を学際的な研究手法により分析し、アイヌ文化の成立過程を追究する。そして、本州から大陸に及ぶ広域的な北東アジア交流史のなかにオホーツク文化・擦文文化の歴史的な展開、アイヌ文化の成立過程を位置づけることを目的とする。

研究会等

概要 日程:2023年2月11日(土・祝)~2月13日(月)
場所:紋別市立博物館・北海道立オホーツク流氷科学センター・オホーツクミュージアムえさし
内容 基幹研究「交流・環境の視点からみたオホーツク文化・擦文文化、アイヌ文化-その成立・展開過程-」 
第2回資料調査
「オホーツク海沿岸地域における環境条件とオホーツク文化・擦文文化の資料調査」
・紋別市立博物館、枝幸町オホーツクミュージアムえさしにおいて資料調査
・北海道立オホーツク流氷科学センターにおいて環境条件、とくに流氷にかかわる調査。
・枝幸町目梨泊遺跡巡検。
概要 日程:2022年12月8日(木)~12月9日(金)
場所:厚真町教育委員会軽舞調査整理事務所
内容

基幹研究「交流・環境からみたオホーツク文化・擦文文化、アイヌ文化-その成立・展開過程-」 
第3回研究会
手塚薫「アイヌの民族・歴史考古学の現状の整理と課題」
乾哲也「厚真町に搬入された中世初期の本州産・大陸産製品について」
奈良智法「厚真町における擦文文化からアイヌ文化の墓の変遷について」
・厚真町厚幌ダム関連遺跡の巡検
・厚幌ダム関連遺跡群出土遺物の資料調査

概要 日程:2022年10月29日(土)~10月30日(日)
場所:枝幸町オホーツクミュージアムえさし 研修室
内容 基幹研究「交流・環境からみたオホーツク文化・擦文文化、アイヌ文化-その成立・展開過程-」 
第2回研究会
高畠孝宗「オホーツク文化における本州系遺物の流入状況について」
熊木俊朗「オホーツク文化の遺跡動態に関する整理と課題」
臼杵 勲「オホーツク文化に搬入された大陸産製品と北方諸文化との関係について」
・枝幸町目梨泊遺跡出土資料の調査
・目梨泊遺跡をはじめとした枝幸町内の遺跡巡検
概要 日程:2022年8月23日(火)~8月26日(金)
場所:利尻町立博物館・利尻富士町教育委員会・礼文町郷土資料館・利尻島郷土資料館
内容 「交流・環境の視点からみたオホーツク文化・擦文文化、アイヌ文化-その成立・展開過程-」 
第1回資料調査
「利尻島・礼文島におけるオホーツク文化の資料調査」
・利尻町立博物館・利尻富士町教育委員会・礼文町郷土資料館・利尻島郷土資料館においてオホーツク文化の資料調査。
・利尻富士町役場遺跡(利尻富士町)、浜中2遺跡・船泊遺跡・香深井遺跡(礼文町)の巡検。
概要 日程:2022年7月2日(土)~7月3日(日)
場所:北海道大学アイヌ・先住民研究センター 会議室
内容 基幹研究「交流・環境からみたオホーツク文化・擦文文化、アイヌ文化-その成立・展開過程-」 
第1回研究会
鈴木琢也「研究計画について」
箱﨑真隆「新年代法『酸素同位体比年輪年代法』の北日本における研究状況」
蓑島栄紀「アイヌ文化概念の形成と変遷」
鈴木琢也「擦文文化に搬入された本州産製品からみた交流の様相」
榊田朋広「擦文文化の集落群構成・動態と地域間交流」

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