幕府瓦解後の旗本土着をめぐる研究

科研費研究

基盤研究(C)一般

幕府瓦解後の旗本土着をめぐる研究

研究代表者 樋口 雄彦(本館・研究部)

研究目的

江戸幕府に仕えた幕臣のうち、知行地を有した旗本を事例に、維新前後の政治的・社会的動向をふまえ、武士身分の近代社会への順応のし方を明らかにする。独立した領主であることと徳川家の直臣であることとが、幕府瓦解時にいかに再認識され、どちらが優先されたのかという問いが基本的なテーマとなる。具体的には、旗本領の名主をつとめ、家臣にも取り立てられた豪農の家に伝来した資料(静岡県伊豆市・飯田家文書)を素材に、伊豆国田方郡牧之郷村(現伊豆市)などに知行地を有した旗本松下家を主要な分析対象とする。幕府が倒れた後、一時的に采地への移住・土着を経験した高禄の旗本の多くが、まもなく旧幕府・徳川家の臣下を離脱し新政府直属の朝臣となることを志向した背景や、その 選択を支えた家臣・領民との近世後期からの関係性、明治2年(1869)に領主の地位を喪失した後も大正・昭和期まで続いた旧領との交流のあり方などに焦点をあてる。