第450回「歴史ではなく、記憶:日本アニメが作る第二次世界大戦のイメージ」
開催要項
日程
2024年2月10日(土)
講師
アルト・ヨアヒム(本館研究部特任助教)
講演趣旨
本講演では、現在、「記憶」と「歴史」の境界線にある、第二次世界大戦・アジア太平洋戦争という出来事を伝達するイメージについて話します。
日本の独特なアプローチとして、第二次世界大戦・アジア太平洋戦争についての教育は、「歴史」よりも、「平和教育」という枠組みに基づいておこなわれています。この平和教育は他の国と異なり、既に小学校から始まります。そして、平和教育の中では、先の戦争の様子を描いたアニメ作品が、戦後日本を代表するメディアとして活用されています。
ところが、このように戦争を現実の出来事として描き、再現する「戦争アニメ」は、日本の「加害者」としての役割をほとんど扱っていないとして、国内外から「被害者意識」の表現として批判されることが多々あります。けれども、戦争アニメの多くの作品の基となったのは、そもそも歴史の研究や記録ではなく、戦争を子供の時に体験した方々の記憶やトラウマ、またはそれらをまとめた小説や自伝などです。
このような背景が、戦争アニメの内容にどのような影響を与え、作品の物語にどのようなパターン化を引き起こしているのか、そして戦争アニメが平和教育に適切な題材とされる状況を生み出しているのか、について今回の講演で考えます。