第446回「推定不能―樹木に刻まれた太陽巨大爆発の謎―」
開催要項
日程
2023年9月9日(土)
講師
箱﨑 真隆(本館研究部准教授)
講演趣旨
本講演ではREKIHAKU 9号(2023年6月刊行)にて特集した「太陽巨大フレア」についてお話しします。
歴博や名古屋大学は、樹木年輪の炭素14分析によって、炭素14年代法の精確度の向上や、数千年にわたる太陽活動復元を行なってきました。名古屋大学の三宅芙沙氏は、そのような研究のなかで、西暦775年の屋久杉の年輪に、平年の20倍にも及ぶ炭素14濃度の急増を発見しました。この発見はNatureに発表され、世界中を騒がせ、その後、全世界の樹木の775年の年輪で再現されました。何故、樹木年輪の炭素14が急に増えたのか、その原因は様々な分野の専門家によって検討されていますが、最も有力な仮説は、我々の最も身近な恒星である「太陽」で巨大フレアが発生したこととされています。
そのフレアの正確な規模は「推定不能」。観測史上最大の太陽フレアの数十倍から百倍の規模とも言われています。近年、太陽フレアは、大規模な停電や通信障害を引き起こす、危険な自然災害として認識され始めています。もし、高度に文明が発達した現代社会において、775年と同規模の巨大フレアが発生したとしたら、想像もできないような大災害が起きる可能性があります。樹木年輪の記録から、その謎に迫ります。